夕方、アカリは玄関へ向かった。ポストの中には、広告やチラシが重なっていた。
チラシの下から、一通の手紙が出てきた。宛名には、「アカリ」とだけ書いてある。
ポストのふたが、ぱたん。アカリは首をかしげた。「だれから?」
玄関の明かりの下で、手紙を表にしたり裏にしたりした。差出人には、「ワタシ ウサインボルト」とある。
紙が、かさり。アカリは目を丸くした。「なんだ、この名前」
靴を片方だけ脱いだまま、手紙を耳に当てた。封筒をそっと振っても、音はしない。
そのとき、封筒がひらりと床へ落ちた。アカリは急いで追いかけた。
封筒を拾い、今度は両手で持った。差出人の名前を、もう一度読んだ。
知らない名前なのに、口元がにっこりした。窓からの光が、封筒をオレンジ色に染めた。
アカリは手紙を胸に当てた。脱ぎかけの靴をそろえ、「また読もう」と小さく言った。