Doodara

マーク、くまをたすける

Guest

このお話について

マーク、くまをたすける

Guest 作 · 水彩 · 3〜5歳 · 10 ページ

マークは、やわらかい緑のシダをよけて、そのなかへ入っていった。濡れた泥の根にからまったまま、ちいなくまの赤ちゃんが「ちーっ」と鳴いて、爪で土をいじっている。マークはそばにどくっとしゃがみこみ、ペタンコの泥だらけの手をさしのべた。

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マークは、やわらかい緑のシダをよけて、そのなかへ入っていった。濡れた泥の根にからまったまま、ちいなくまの赤ちゃんが「ちーっ」と鳴いて、爪で土をいじっている。マークはそばにどくっとしゃがみこみ、ペタンコの泥だらけの手をさしのべた。

ゆっくりと、ちっぽけな前足がゆるやかに開いていった。赤ちゃんは上をむいてマークを見上げた。鼻が、ぴこぴこ。もう片方の泥だらけの前足は、まだ根の上にのしかかっていた。「ちぃー」と。ちいさく。ちいさく。

赤ちゃんは利き足をひきずって、もっと暗い森の奥へ進んだ。ふと、とまる。振りむく。また、とまる。また、振りむく。マークはついていった。ふかふかの苔の上で、やさしい足音が響いた。

マークは身をかがめて、赤ちゃんのちっぽけな体を両手でそっとおさめ、持ち上げた。ちいなくまは板みたいに硬くなった。それから——ゆっくりと伸びして、肩の力がぬけていく。雨にぬれた松の香りが、じわっと鼻孔をぬけ入った。

道は広い川で途切れ、冷たい水はマークのすねまで届いていた。マークは赤ちゃんを肩に高く乗せて、川の中に足を踏み入れた。茶色い水と銀色の波紋が、ブーツのまわりでゆるゆるとゆれた。

赤ちゃんは、利き足をマークの耳の後ろに回してまとめた。ぷつー、と、びっくりするほどちいなくしゃみ。マークはどかんどかん水をかき分けながら、はっはっはと笑い、水は背丈ほどの草むらに、左右へ跳ねていった。

道がカーブをまがるか、そこにかんじゃくまの姿がふんわり迫ってきた。巨大な体。くくくっと口を引き上げ、のどごころからぶるりと低い唸りが響く。マークは赤ちゃんを地面に下ろした。一歩、後ずさり。両手をひらいて。そして、動かず。

唸りは、じわっと遠のいていった。かんじゃくまは大きな頭を垂れろげ、びちゃびちゃにぬれた広い鼻先を、マークが差し出した指先にそっと押しつけた。長い、ゆっくりした息。それから、頭を引き戻した。

かんじゃくまは赤ちゃんを鼻先でよせつかせ、でっかい体をずらして道を空けた。ちいなくまは母の側面にぺたんと身を預けた。マークはそのそばを通り過ぎた。先には、ひろやかな道がどこまでも続いていた。

家に帰る最後の通りで、ベタベタした実がひとつ、マークの靴にすりついていた。小石をゆるい砂利にキック。もうひとつ、キック。そのまま、歩み続けていった。