タヌキのタロは、泥にまみれた社(やしろ)の跡で、割れかけたお札をそっと抱きしめた。風が乾いた葉を掃く音が、静かな谷間に響く。
タヌキのタロはお札を背負い、新しい場所を探して歩き出した。石畳の端で足元が滑り、お札がぐらりと揺れる。
道すがら、小川がせせらぎながら流れていた。水音に合わせてタヌキのタロは足を踏み替え、焦らず前に進む。
突然、大きな岩が道の真ん中で転がり落ちる音とともに現れた。タヌキのタロは驚いて立ち止まり、お札を両手で守るようにした。
岩の上には小さな鳥が止まり、さえずりを始めた。鳥の声に背中を押されるように、タヌキのタロは岩の横を通り抜け、穏やかな空の下へ向かった。
谷間は静かになり、風も優しくなった。タヌキのタロは深く息を吐き、肩の力を抜いた。
遠くから鐘の音が聞こえた。新しい村の始まりを告げる、澄んだ音色だ。
タヌキのタロは振り返らなかった。お札を抱えて、彼は新しい一歩を踏み出した。