ささやく雲が、ふるえた——そして、ぴたりと静まった。 雲の瓣が、ふわりと落ちてきた。 彼女の、鼻先に、ちょうど届いた。くすぐったい! 彼女は、ピンク色の帆の舟に飛び乗って、岸を離れた。
彼女は、こぞえりをきびきびとこいだ。 ピンク色の帆に風がはいって、ふくらんだ。 木のホイッスルで吹く——音が、空にぷかぷかと浮いている。 返事はない。 もっと速くこいで、下で海にぶちゃりぶちゃりと落ちる滝の横をかすめた。
一番高い雲の島のてっぺんで、キラキラと光る城を見つけた。 低い弧を描いたにわとりが、ぶら下がっていた。 彼女はすいっとジャンプ——にわとりのうえへ! トランポリンのように、ゆらゆら揺れた。 冷たくて甘い、雲のしずくが、ほっぺにひとつ。 彼女は、くすくす笑った。
彼女は、雲の国にたどり着いた。 雲たちは、無言だった。 彼女は、ホイッスルをしまって、毎晩耳にしている子守唄を歌い始めた。 小さかったけれど、たしかな声だった。
雲たちは、ふるえだした。 銀の光で、ゆらゆらとはためいた。 ひとつが、ふわりと降ってきて、彼女の手にすりよせかけた——あったかくて、ふわふわ。
彼女は、ピンク色の帆の舟にもどって、のぼった。 雲たちが、頭のうえから、やさしい旋律を歌ってくれていた。 彼女は、ごちゅうをさす、こぞえりをこいだ。
下では、村がにわかににぎわっていた。 笑い声と踊りが、路地いっぱいに広がっていた。 彼女は、こぞえりをこいながら、雲たちの歌に耳を傾けていた。
彼女は、身体をかたによせて、満足そうに、にじりだした。 ささやく雲たちは、すべてのものを、見守り続けていた。