エンバーは、くねくねした森の道を、スキップで駆け下りてきた。ブーツがやわらかい草をパタパタ。と、ぴたり。——前方の高い草の中で、まるいものが光っている。
しゃがみこんで、タンポポの綿毛をそっと分けてみる。そこにあるの。とぐろを巻いた灰色の卵。ひやりとするほど冷たい。落とした石みたいに、土の上にころんと置かれている。
ふぅ、ため息を吐く。両の手で、ちいさな灰色の卵をふわっと包む。草原の風が襟元をそっと引き、タンポポの種が指のすき間をすり抜けていく。
卵をポケットにしまって、急いで走る。ちょっと先、木々の間から、ちいさな木の小屋の屋根がのぞいている。
クローバーの茎。古いブランケットの切れ端。窓辺にそっと敷いて、耳を殻にぴったりつける。……何もない。
毎晩、トントンと、灰色の殻を軽くなでる。聞こえるのは台所の時計のチクタクだけ。窓の外では、小川が細い囁き声を流している。眠っている小鳥をなでるように、卵をトントンと拍(つ)く。
三晩が過ぎると、卵がすわっと震えた。殻に细细いひびが走り、暗がりに、紫の光の糸がとろりとこぼれた。
卵がクローバーのベッドの中でゆれて、左に傾いて、また右に。風に乗った種のよう。ひびの入った殻を、指先でそとなでる。——「もうすぐ」。その言葉が、つかまえられる前に、すっと口からこぼれた。
草原の風がドアをドッ!と叩きつける。殻がぱっと弾けた。ちいさい、しわしわのドラゴン。ろうのような紫色。ラベンダーのしずくのような光が、くしゃとともに、まっすぐにエンバーの鼻先に飛んできた。
まだ朝露の冷たいしずくが残る草地へ。ドラゴンが、尾をエンバーの親指にぐるりと巻きつけてきた。ちいさな紫の影が、パタパタとブーツの後ろをついていく。ねばねばのうろこに、クローバーの葉りがぽこっと貼りついている。







