Doodara

ちいすい、でも ちのほ

S. Motta

このお話について

ちいすい、でも ちのほ

S. Motta 作 · 水彩 · 6〜9歳 · 8 ページ

ピポカは物干し竿にかけたシーツを引っ張りだした。ところが、風がそのシーツをひっぺがして、金網のフェンスにぐるぐる巻きにしてしまった。すると、ざっと降る雨の合間に、か細い猫の「ニャー、ニャー」が響いた。あまりに高い声だったから、ピポカの耳がぴくっと、勝手に上がってしまった。

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ピポカは物干し竿にかけたシーツを引っ張りだした。ところが、風がそのシーツをひっぺがして、金網のフェンスにぐるぐる巻きにしてしまった。すると、ざっと降る雨の合間に、か細い猫の「ニャー、ニャー」が響いた。あまりに高い声だったから、ピポカの耳がぴくっと、勝手に上がってしまった。

ピポカが見つけたネコの子は、割れたプラスチックのバケツの下で、丸まっていた。小さな爪がバケツの縁をぐぐっとかんでいて、ぴくりとも動けない。風がガラスの瓶を、ころころ、地面を転がしていく。ドン、ドン、ドン。

ピポカは、背の高い切り株の前足を滑りやすい苔に突っ込んで、ぴょんっと登った。ちいさな喉がはちきれそうなくらい、大きく——アウ!アウ!アウ!——三回も、嗷いた。

ネコの子は、やがて鳴きやめた。黒い目が、雨粒のなかで光る二つの小さなコインみたいに、ぱっちり開いた。そっと、ゆっくり、首を切り株の方へ伸ばした。

ネコの子は勢いよく走り出したが、道が間違っていた。まっすぐ、ふたを開けたままの貯水タンクの方へ向かっていってしまった。ピポカは体を投げて、ネコの子の前に飛んで出た。四つの小さな足が泥にしっかり食い込み、嵐の中で、ちいさなクリーム色の点がひとつ、浮かんでいた。

雨が、一瞬だけ、止んだ。とんでもないほどの静けさだ。その静けさの向こうから、ピポカのか細い声が、さっぱりと響いた。「ここ!ここに飛んできて!」ネコの子は、はたくように二度、まばたきをした。

ネコの子は、まず貯水タンクを見て、それからピポカを見た。そしたら、すべり込むように、ピポカの腕の中へ身を落とした。犬小屋の奥では、古いほうきが敷き布団代わりに敷いてあって、ネコの子はその上で、体を震わせながら丸まっていた。

ピポカは犬小屋の前にすわっていた。鼻先からは、まだ水滴がぽた、ぽたと落ちている。しっぽが、木の床を「パタ、パタ」と叩いていた。ネコの子が、ちいさな顎をピポカの手の上に乗せた。しっぽが、もう一度、「パタ」と鳴った。